天下無双

機会があるごとに神漫画スラムダンクの作者である井上さんが手がける、これまた神漫画バガボンドを読み進めているのだが、先日30巻くらいまで読んだ。そこで考えたことがあるからエントリー。ちなみに若干のネタバレを含むので、バガボンド読んでるけどまだ30巻まで読んでないってひとは見ないように。


バガボンドの主人公は天下無双を目指す男、宮本武蔵。天下無双を目指し、自らの剣の向上のために様々な強敵と死闘を繰り広げ、武蔵が成長していく様が描かれている。そんな物語の中で、剣の名門吉岡の当主、天才吉岡清十郎を上半身を真っ二つにして倒し、新しく当主となったその弟吉岡伝七郎との決戦も制する。そして門下生全員の恨みを買った武蔵は、伝七郎の意思を引き継ぎ新当主となった植田良平の指示による、吉岡一門70人の総攻撃に挑むことになる。戦いの最後に良平から右ふくらはぎに剣士生命に関わる深手を負うことになるが、武蔵はこの戦いに勝利する。つまり武蔵はたった一夜にして70人の死体を生み出すこととなった。このうわさは瞬く間に全国に知れ渡り、吉岡一門70人を一人で倒してしまった武蔵は、当初の目的であった天下無双に一気に駆け上がることになった。


この時どっかのお偉いさん(具体的なの忘れた笑)に、天下無双の男、武蔵に自分の城の剣術指南役になるよう打診する。そこで武蔵は天下無双に関して次のようなことを述べた。


「天下無双は陽炎のようでした」


天下無双になるために自らを研鑽してきた武蔵だが、天下無双が近づくにつれてそれが陽炎のように遠い存在になってしまったという。あくまで推測に過ぎないので、これからの発言に大した価値はないのだけれど、これから次のような教訓が読み取れるのではないかと思う。自分の人生において、何を最優先にして生きるかというのは人それぞれ。世紀の大発明をして世界に認められるために仕事を第一にする人。家族との絆を大事にするため家族を第一に考える人。武蔵の場合前者に近い。天下無双の栄誉を手にするために全力で駆け抜けてきた。しかし結果得たものが自分が第一に考えてきたものとは違っていた。ゆるぎない名声というのは必ずしも自分の中の第一となるものとは限らない。


至る結論はいつも同じところ。何か大きな決断をするときには、その結果得られるものが本当に自分にとって第一なものなのかを吟味するのが大切。大きなものが得られたところで、それ以上の代償があっていては仕方ない。そのような事態を避けるためにも、一度きりの人生において自分が本当に第一に考えているものは何なのか、ということはじっくり考えないといけない。